充填。



「要るって言え。」
 俺様な時任の言い方に、
「なんか、要るかも。」
 そう応えた俺の声が震えてたのはバレてたと思う。繋いだ手には思い掛けず力が入って、安堵と戦慄を一緒くたに握り締めた。
「え、ナニ?!」
 立ち上がるフリして引き寄せる。体勢を立て直すこともできずに倒れ込んでくる時任を、ぎゅって抱き締めて耳元に唇を寄せた。
「……要る、スゴク。」

 他にナニも要らないくらい。俺自身すら、要らないくらい。

「要る。――欲しい……。」
 耳の中に吐息と舌を同時に差し入れてから、両手を時任の淡く染まった頬に添える。逃げそびれて身動きのとれないカラダの代わりに、潤んでもまだ強い光を湛える瞳だけが逸らされた。

 欲しくて、止まらない。

 欲情が、タマラナイ。

「ごめんね。」
 呟き諸共、唇に押し込める。片手を背骨に沿って滑らせると、頑なに閉じていた歯列が薄く開いた。そのまま口の中を味わう。ナニもかも全部、貪る。
「…んっ、ァ……は…っ。」
 溢れた唾液を追って唇を解放すると、喉を反らして喘ぐ声が脳髄を直に刺激する。ダメかも。もう、離せない。
 顎から首筋に噛み付く。所有印よりもキツイ、徴。
 背中に回していた手を腰を撫でるようにして前へ。ジーンズのボタンに触れるか触れないかで、我に返ったかのように時任が牽制してくる。
「ヤ、メろ…っ!」
「うん。」
 そんな理性はもうどっか逝っちゃったよ? アタマとカラダが別で。疵付けたくないのに、せっかく触れもイイって許可も得られたのに――また、失ってしまうかも知れないのに、俺が、止められない。
 ボタンを外して、中のソレを握り込む。
「ゃ、だ…って……。」
 咄嗟に出る全力の右手で抵抗する時任。
 ギリ。
 軋む骨。痛みは感じない。だけど。
「また、折れるかも。」
 俺は間違いなく卑怯者だあね。俺の腕を掴んだ右手の力が怯えるように緩んだのを見逃さない。
「イヤなら、折ってもイイよ? ああ、いっそ先に――、」
 イかせてくれても。
 力の抜けた隙に時任の身体を起こして壁に押し付けると、また唇を奪う。
「ん…っ、んぁ、ふ……っ。」
 深く、浅く、角度を変えて犯す。時任が無意識に舌を絡めてきた頃を見計らって、緩めてあったジーンズの前を大きく寛げた。
「!!」
 唇を繋いでいた唾液の糸を断ち切って、時任のソレを大きく咥え込む。逃げる腰を抱いて口だけで奉仕する。
 全部を飲み干すために。
「くぼ、ちゃ…っ、ァ、放、せ…って!」
「全部要るんだよ? 時任の、全部。」
 ナニも無かった俺を、時任で満たして。
「ちょーだい、時任?」
「ぅ、ぁあ……っ!」










 おまえで満たされるために、今まで生かされてきたんだと思う。
 たったそれだけが、俺の存在理由。










空っぽな僕に君を全部注いで。



...end...

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