鼓動。


 狭い部屋に聞こえるのは、パソコンの空冷機の音、衣擦れ、そして声にならない、コエ。
「ぁあっ、ん……っ、くぼ、ちゃ……っ。」
 縋り付くように背中に回ってる時任の腕に力がこもる。手袋越しでもその存在を主張している獣の爪。
「……いいよ、時任。イって?」
 耳元に唇を寄せて、掠れた吐息で伝えるのは自分も耐えられないから。
「はっ、ぁ、……っあ、ぅ……っ!」
「……っ。」

 そのまま右手で貫いて。










 その右手を見た時、「ああ、やっと。」って思ったりして。
 コレに貫かれるなら本望。背中から、一番イイ時に、イかせて欲しい。

 時任を感じて。
 時任の中で。

 そしたら、こんな俺でも、テンゴクへ堕ちていける気がするんだよね。











「久保ちゃん……。」
 狭いベッドの上で。半身を起こして煙草を吸う俺の、左胸の上を辿る時任の手が止まった。
「ん――?」
 視線は合わさない。けど、心臓を掴まれてる気分。
「スゲー。ドキドキいってる。」
「時任にマンゾクして頂くように必死デスカラ。」
 消費した体力と酸素を身体中に送り出す機関だから、一応。
「ウルセェ。そうじゃねーよ。」
 言葉と一緒にカラダが乗り出してくる。まだ火照った時任の頬が胸に触れた。

「ちゃんと生きてんじゃん。」

 ああ、そうか。鼓動は生きてる証明なんだ。だってほら、寄り添った時任のカラダからも感じるし。自分で気付かなかったけど。
「俺様が保証してやる。」
「――うん。」

 同じ右手で俺を生かす。

 俺を生かすも殺すも、お前の右手次第。
 



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